界面物理学〜1.Youngの式〜

背景

物質状態には、固体(Solid)、液体(Liquid)、気体(Gas)、プラズマ(Plasma)といった4種類の状態があります。中でも、水を代表とする「液体」は、他の3つの状態と異なり、非圧縮性の体積を持ちながら、明確な形状を持ちません。

流動性表面張力といった特徴が、液体の濡れ性(Wettability)、浸透性(Infiltration property)、滑り性(Sliding property)などの現象の基礎になっているため、固体表面上の液滴の動きを見ることは重要になってきています[1]。

科学者たちは、固体表面上における液滴の振る舞いを観察することで、この解明に取り組んでいます[2]。

(解明が進むと、国連のSDGsで取り上げられているようなエネルギーの諸問題も解消できると言われています。)

実は、このような解明をしていく上で、自然界に存在する動植物の表皮を観察することが大いに役立つことがわかってきています。Principia Lab(プリンキピアラボ)では、動植物の表面構造も紹介しながら、界面物理を理解するのに必要な原理を見ていきたいと思います。

濡れ性 (Youngの式 )

濡れ性とは、固体表面に水滴がついた時に、どれくらい濡れ広がるかの程度を表した性質です。この性質を深掘りしていくと、「ヨーグルトの蓋になぜヨーグルトがつかないか」などが理解できるようになってきます。

一般的に、この性質は、接触角(Contact Angle)を測定することによって判断されます。図1は、固体の上に水滴が乗っている状態を表したものです。

schematics of droplet contact angle
図1.液滴接触角の概念図

接触角とは、「液体と気体の界面と固体表面が交わる角度θ」で定義されます。

(界面って何?と思った方はぜひこちら。二つの物質の境目のことです。)

この接触角と表面張力の関係を表す式が、

$$\gamma_\mathrm{SG} = \gamma_\mathrm{SL} + \gamma_\mathrm{LG}\cos\theta$$

であり、これをYoungの式と呼びます。

ここで、$$\gamma_\mathrm{SG}, \gamma_\mathrm{SL}, \gamma_\mathrm{LG}, \theta$$は、それぞれ、固体(Solid)/気体(Gas)の間に発生する界面張力、固体(Solid)/液体(Liquid)の間に発生する界面張力、液体(Liquid)/気体(Gas)の間に発生する界面張力、接触角です。

一般に、この接触角θの値が90度よりも大きいと、撥水性といいます。いわゆる液体がコロコロになります。植物の葉の表面などでよく観察できます(図2)。

droplet and surface of plant
図2.液滴と植物の葉表面

反対に、90度よりも小さいと、親水性といいます。これは液体が、固体表面に一部あるいは全部染み込む状態です。ヒトの皮膚などはこれに当てはまります。

このようにして、濡れ性は、定量化できます。次回は、このYoungの式を少し拡張して、深掘りしていきたいと思います。

プリンキピアラボチーム

参考文献
[1] Stimuli-Responsive Bioinspired Materials for Controllable
Liquid Manipulation: Principles, Fabrication, and
Applications
.
[2] Drop Impact on a Solid Surface.
[3] Purity of the sacred lotus, or escape from contamination in biological surfaces.